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9-2 利用者がシステムを理解できる仕組みや環境を作ろう

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【利用者はどこまでシステムを理解するべきか】

いきなりこんな突っ込みをしたのは理由があります。当然利用者たる人は利用する情報システムについて理解していることが必要です。しかしその深さはどうでしょう。以前のシステムであれば、単にシステムの操作だけを知っていればいいという事が許されていました。

最近のシステムは機能が多くなっている事や、情報システムの領域が定常業務だけでなく企画業務や研究業務を支援する領域迄進出しているので、応用動作を伴う使い方が望まれるようになりました。よく似たたとえ話になりますが、TVのリモコンはリモコン初期のものと比べると最近は沢山のボタンやスイッチがついています。単にTVだけを見るなら電源や音量、チャネルボタンの操作だけで事が足ります。しかし音質を調整したり、字幕を出したり、番組の表示などその時の状況に応じて必要な機能を使おうとすればリモコン全体の機能を理解しなければなりません。知っていると更に有効に活用できます。情報システムも同じなのです。そのためにはできるだけ大勢の利用者ができるだけ高度な利用ができるようにすることがよりベターなのです。

 

 

【操作マニュアルの作成】

まず操作マニュアルを作成しましょう。情報システムの利用者向け研修には必ず教本を準備しなくてはいけません。操作マニュアルと書きましたが、この内容は通常2つの構成になるはずです。先ず第一は情報システムの操作方法を理解してもらうために実際の画面などを使って業務毎に操作方法の説明がされている内容です。第二は業務のルールを説明したものになります。業務のルールとは情報システムを利用して業務を実行する場合に人間の行動や判断の制約や規制になるものです。情報システムの有無にかかわらず業務ルールはどこの職場にもあるはずです。そして暗黙知として運用されていることが多いのです。このようなルールを共有して明示することも操作マニュアルの役目になります。新入社員の配属や人事ローテーション等には受入れ教育の教本としても利用されるはずです。新システムの稼働に合わせて業務ルールを暗黙知から形式知にするいい機会なのです。

 

 

【研修の実施】

システムの稼働前には利用者に研修を行う必要があります。そのためには研修で利用する情報システムの研修環境を作る必要があります。研修環境とは実際の研修時にPCを操作してシステムを利用できるように研修用の業務システムと研修用のデータを用意することです。具体的な実施方法はいろいろありますが、研修会を実施するときだけ必要になるものではありません。研修終了後に個人個人が自席に戻って自習する時にも使えるように開放するすることも視野に入れて研修用環境を作成してください。また新入社員やローテーションで配属された人の研修にも利用できるように工夫をしておくべきです。そのためには研修用の社員番号や研修用の顧客、研修用の商談、研修用の発注書や納品書や請求書なども用意して、本システムと同じ動作をするように環境を整えます。そのような準備をしたうえで利用者に研修用のPCを使って研修を行います。できるだけ自分自身で操作をするように仕向けて下さい。但し理解の遅い人に研修スピードを合わせると効率が悪くなります。7割程度の人が理解できればいいという位の割り切りが必要です。理解不足の人は後日再研修するか、個別に研修をするような工夫をしたほうが良いと思います。以前にも記述しましたが操作を理解してもらうことはシステムの評価向上にもつながります。

 

 

【指導員制度】

現実の中小企業の現場では情報システムの操作に詳しい人とかなり苦手な人が混ざり合って存在することになります。慣れている人はほっておいても自分で吸収し理解していきます。しかし慣れていない人(幸いというか不幸というか、今までは慣れなくても多少の不便を我慢すれば済んでいた人)にシステム操作を覚えてもらうことは意外と大変なことです。通り一遍の研修や多少の自学練習では難しいでしょう。悪いことにそのような人は職場の管理職に多いので、部下に代理入力をさせたりすることも可能です。しかし今後の情報システムは企業の経営者から新入社員まで全員が、必要な情報システム操作は自らしなくてはいけません。それが情報化社会であり、来るべきデジタルトランスフォーメーション時代に個人も企業も生き残る条件の一つです。従って慣れていない人の対策用に職場ごとに「指導員」を指名して、日常の業務の中で適宜ハンズオンで研修や教育ができるようにするべきです。指導員の存在が慣れない人にとって「慣れないことを正当化する」言い訳をなくすことができます。

 

 

【FQAの作成】

FAQとはよくある質問を纏めて検索しやすいようにして、システム利用者に提供するものです。システム操作の理解を促す場合に研修や指導員制度の説明をしてきましたが、初歩的な事などをたくさんの人から聞かれてその都度担当者が答えるのは大変なことです。もちろん規模にもよりますが、利用者が沢山いるときは、FAQを作成して、利用者自らが過去の質問事例やトラブル事例を検索して自分自身で理解し解決することはできれば周りの人に迷惑をかけないで習熟に向かうことができます。現在ではこのFAQがいろいろなところで使われています。特にコンシューマー向けの製品の取扱いなどはインターネットで検索すればすぐに出てきます。社内の情報システムやインフラシステムに関することもFAQ方式を導入ことも一考に値します。

 

 

【自律的学習の企業風土】

利用者が情報システムを有効に活用するためには身の回りにある情報システムをよく知ることが重要になりました。以前は限定された人が専門的に情報システムと向き合っていればよかったのですが、現在は全社員、全企業関係者が情報システムを使いこなさないといけません。情報システムの管轄部門が十分に利用できるための研修や理解してもらえるような仕組みを作ることが大前提ですが、利用者側も自ら有効活用するための自律的な理解や訓練を実施する気概がないと片手落ちになります。自らがそのよう行動をとるためには風土の醸成が必要です。職場ごとに情報システムの利用に関する課題を共有して切磋琢磨する風土が生まれるのが一番です。誰がリーダシップをとってどのような方法で推進するかは各企業ごとの事情を勘案して実施しなければなりません。