中小企業をITで元気に!

6-3 自律的な運用体制を前提にした外部Sirの利用方法

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【外部Sirを利用するのは是か非か】

 本稿ではずっと自社で自立できる情報システム体制を確立するべきであると主張してきました。その理由は情報システムは企業の血管であり、当事者意識を持っている人が自身でケアすることが、情報システムを有効活用の必要条件だからです。それでは世の中にあまた存在しているSir(System Integreater)やサービスププロバイダーと呼ばれる外部の専門家を利用する必要はないという事でしょうか。そんなことはありません。情報システムの開発や導入、保守、運用をする上で情報システムの幅広い専門スキルは絶対に必要で、またその必要人数も時期によって大きく変動します。従ってスキルの品質と量どちらの面でもある程度外部に頼る必要があります。大事なことは自分たちの持っているスキルを認識して足りない部分を外部に頼る。そして自社で保有するべきスキルと外部に委ねるスキルを時間軸で検討したうえで計画的に利用することが大事なのです。

別の視点からも見てみましょう。そもそも日本のITサービスの技術者数は質も量も全く足りない状態です。それが大企業に向いているのですから中小企業向けのサービスは推して知るべきです。必要な時にサービスを受けられる保証はないと考えなければなりません。システムの緊急対応や日常の安定稼働に必要なスキルの自社保有は必須です。中小企業だからこそ必須なのです。

 

【自らの社員で保持するべきスキル】

自らが保持するべきスキルで絶対欠かせないのは情報システムのキーパーソンのスキルです(本稿2-5情報システム化には社内にキーパーソンが必須)。これは既に説明をしているのでここでは省力します。次に日常の情報システムの運用がスムーズに稼働するようなスキルを持つ人材が必要です。できる事なら専任者を充てることでモチベ―ションと責任感が高まり、日々のシステム改善に注力できるので、より一層システムの利用者は有効活用が図られます。この人材は社内の主要なシステムを開発するプロジェクトチームの中で育成できます。またそれが自然な方法です。稼働後はその人材が日々の情報システム関係の業務を取り仕切ることになり、前述のキーパーソンとともに情報システム体制の要になります。最低この二人と利用部門の中の情報システム理解者が揃うと、中小企業の情報システムを自立的に成長させ、持続可能な体制を保持できることになります。

 

【外部専門家に委ねるべきスキル領域】

他方どのようなスキルを外部に頼ればいいかを検討してみましょう。これは企業規模や情報システムの重要度によって変わってきます。一定の定石はありませんが明らかに外部専門家に依存するのがベターであると考えられる領域はあります。先ず一つ目は「情報システムインフラ基盤の運用」です。今後の企業の情報システム基盤はクラウドコンピューティングを前提に構成されます。その場合のインフラ環境はクラウドベンダーから提供されるので、クラウドベンダーの技術者に依存することになります。もともとそのようなサービスも含まれているのがクラウドの定番になります。しかし利用者側もクラウドの借用に際していろいろな選択肢の判断ができるレベルのスキルは知識として身につける必要があります。二つ目は情報システム関係の作業が一時的に増える時期(開発時、インフラの変更に伴う移行時期等)は外部のサービスプロバイダーを活用することです。技術者の需要が変動する場合のピークカットは経済的な側面でも有効です。但しこの場合でも丸投げスタイルはいけません。委託先も含めてプロジェクトのGOALを共有して成功するためにはプロジェクトマネジメント責任は逃れらません。ベンダーコントロール能力は磨いておくべきです。三つめは派遣技術やフリーランスの技術者を利用する方法です。短期的な支援や体制のバックアップ等いろいろな場面で利用するべきです。この場合優秀な派遣技術者であるほど委託した仕事が属人化して、依頼者からみてブラックボックス化する危険性があります。そうならない利用方法を留意しましょう

 

【情報システム部門のアウトソーシング】

かって2000年ごろから大企業では「戦略的アウトソーシング」と称する情報システム設備や情報システム業務の外部委託が流行しました。自社の情報システム部門や情報子会社を大手サービスベンダーに移管して「餅は餅屋にお任せしよう」という考え方でした。結果的にベンダーロックイン状態が促進され、費用も高止まりすることになりました。更に戦略的な情報システムの開発や活用が同業他社に比較して劣後になることが明らかになったのです。現在は反省機運が高まり、元に戻す大企業が増えてきました。

しかし情報システム人材の乏しい企業は、この考え方は現在でも解決策の一つと考えられます。どれだけでも事業拡張のために人材が欲しいスタートアップ企業などはコスト的に高くなるのを承知でこのアウトソーシング手法を採用することはむしろメリットが大きいのです。中小企業でも資金的に余裕があり成長に注力する経営方針を掲げる場合は一考の余地があります。ただこの場合でも相手先の選定が難しいと考えるべきです。委託先の経営者に対する信頼、委託先の財務に対する信頼、委託先の技術者(のマインド)に対する信頼が確認されなければ不用意に踏み出すことはお勧めできません。