中小企業をITで元気に!

5-3 身の丈に合った情報システムを活用する

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【利用者の器量より大きい情報システムは使いこなせない】

 

 2000年頃からERP(Enterprise Resourse Planning)という統合業務システムが日本企業に提案され、どこの企業もこぞって導入した時期があります。そのうたい文句の一つに「世界トップ企業の洗練された業務プロセスがシステムの中に組み込まれています。それを選択することで業務改革が容易にできます」というものだった。体力も資金力も人材力も違う企業の業務プロセスをまねた結果、どれだけ現場から反発されたか、苦い思いをされた方が沢山いるはずです。結果アドオンという変更を加えたり、一部の機能だけを利用したという状況で海外のERPベンダーだけが潤ったという現実が残りました。いや今でも潤い続けているといって過言ではないでしょう。 ここから得られる教訓は身の丈に合った情報システムが一番よいという事につきます。もちろんこの意味は現在の業務プロセスやビジネスプロセスに合わせて情報システムを作成するという事ではありません。ビジネス改革や業務プロセス改革は日常的に意識し、環境の変化に合わせて常に自分を変える努力が必要であり、経営者の永遠の命題と言えます。その上でわが身に合った情報システムを開発したり構築することが身の丈に合った情報システムであるという事です。 過去には体に合った「オーダーメード」の服をあつらうにはお金がかかりました。それで「つるし」に走ってみたが、中小企業に合うサイズの服は見当たらず無理に大きい服を着て我慢をしていました。今後は半製品の「イージオーダ―」が主流になる時代です。情報システムの進歩は驚くべき速さで進んでいます。沢山の生地から選択して、沢山のデザインや身の丈に合うパターンが用意され、少しの研修で自らの服を縫い上げることができるようになります。先ずは自分の身の丈と体型を知ることから始めましょう。

 

 

【活用するためには研修と稼働後の活用支援が重要】

 

 私が中小企業の情報システム構築と活用の相談を受けていて一番感じるのは、パフォーマンスの良いシステムや盛りだくさんの機能を持っているシステムより、使いやすくてシンプルなシステムのほうが利用者にとって活用されやすいということです。そして思いのほかシステム利用をする上で研修の持つ重要性を感じます。特に情報系と称する情報格納や検索を主とした試行錯誤する業務(例えば研究開発向けのシステム)は、時間がかかることを覚悟すれば従来方式でも仕事ができることが多いのです。システムに慣れ親しむためにはしっかりした研修を受けて利用者が情報システムを手のうちに入れ、サクサクとシステムを活用することが一番大事です。そうです。「システムは動いて(使って)なんぼ」という事です。特に年配者の多い職場はどうしても保守的になり新しいことにチャレンジする気持ちが薄くなりがちです。落ちこぼれをなくさないように職場ごとに補佐する人がいて、落ちこぼれが出ないようにシステム活用のレベルの底上げをしていくように心がけましょう。以前のシステムは情報システムがカバーする業務の領域が狭かったので特定の人が利用できればそれで活用できました。しかし全業務に情報システムが関わってくると社員全員が情報システムの利用者になり全員が活用しなければ全体の生産性が上がらなくなりました。そのためには利用者向け研修と稼働後しばらくの間の活用支援をきめ細かく進めることが一層の重要性を増してきました。

 

 

 

【自分たちの情報システム活用能力と構築能力を把握する】

 

 身の丈に合った情報システムを開発して活用するには、自分の身の丈を知らないといけません。しかし洋服をあつらえるときに使うメジャーは残念ながらありません。その上身の丈はどんどん変わっていくものです。そこである程度の想定で一旦システムを開発して、研修や本稼働の様子を見ながら利用者の意見を聞いて判断します。スムーズに業務が進まないケース、利用者からクレームが多い機能、修正や追加機能をリクエストされるケース等があります。その時に重要なことはシステムを修正するだけの対応でなく、利用者に我慢を強いてシステムに慣れてもらうという選択をすることです。利用者の圧力に安易に迎合すると利用者のシステム活用能力を低下させます。そしてこの判断基準は目先の利便性でなくシステム活用能力を向上させることを念頭に置かなければなりません。一番警戒をするべきことはシステムを「バカチョン」方式にしないことです。今後の情報システムは自分の活用能力と業務の変化に対応して情報システムの機能も対応しなければなりません。 対応するためには「システムの開発や保守」を外部に頼っていてはその能力が身につかないのです。泥臭くても自分達で考えて試行錯誤を繰り返すことで能力が身につきます。そして最近のシステム開発環境は日常のシステム保守や稼働に関する作業の80%程度は以前のように専門家に依頼しなくても利用者自身でできるようになりました。

 

 

【利用者と情報システムは相互に啓発して向上する】

 

 企業で利用される情報システムは大きく分類するとSOR(System Of Record)とSOE(System Of engagement)に分かれます。ひと昔前の企業システムはSORに留まっていましたが、戦略的な情報システムの活用は主にSOE分野になります。そしてこの分野のシステムは一旦開発した後も、常に進化を余儀なくされ、利用者のシステム活用能力が高まると更に新しいSOEが生まれるという特徴があります。またSORの世界でも利用者が意識すればさらに業務に効果的な機能が生まれることもあります。このように情報システムはその利用者が成長すれば情報システムも高度化(機能的な高度化でなく、業務効率や戦略性の高度化)しているという相互の啓発作用があるという事を認識すると将来の情報システムの高度活用が見えてくると思います。