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5-2 外部から理解しにくい情報システム問題

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【情報システム基盤の重要性は認識されにくい】

 コンピュータを利用した情報システム問題を考えるとき、経営者レベルは業務システムについてはある程度興味を持ち、情報も持ち合わせています。しかし情報システム基盤については無頓着な人が多いのも事実です。「コンピュータについては素人だから」「それは貴方にお任せしているから」という口上で距離を置きます。一部の方はしっかりした知見があり、的確な判断をしてくれますが、私が知る限り少数派です。なぜ情報システム基盤が重要か?。それは情報システム全体の性能を決定することに他ならないからです。情報システム基盤の性能とは「使い勝手」「処理の速さ」「記憶の大きさ」「セキュリティの強さ」などですが、その上に業務システムが乗っかるのでその性能はすべての業務システムに関係してきます。現在稼働している業務システムや将来新たに開発される業務システムもみんな影響を受けることになります。いわば情報システムのプラットフォームという位置づけでしょうか。

 この情報システム基盤は新しい技術や新しい製品のデビューにより相対的に陳腐化する運命にあり、バージョンアップが繰り返されています。それ自体は喜ばしい事ですが、メーカや製品によっては以前の製品と整合性が取れなくなり機能不全となる危険性を孕んでいるのです。情報システム担当者が頭を抱えるのはこの現実を関係者以外誰も理解してくれないことです。通常の家電製品などとは比較にならない大きな影響が広範囲にわたり、理不尽と思える更新費用が発生するからです。

 先の情報システム基盤の棚卸しをしていれば、情報システム基盤の一部を更新する場合にどこまで影響するかが見えています。また将来の情報システム基盤の方向性を考えておけば、2重投資や無駄な投資を回避することも可能になります。現在の自社の情報システム基盤の抱える問題と将来の課題を常に頭において業務システムの構想を考えることがまず最初の一歩になるのです。

【情報システムの開発、構築の問題】

 情報システムの開発や構築(パッケージやモジュールの組み立てによるシステム開発方法を総称して構築と称する)をする場合の問題や課題となるのは、業務システムの実現方法をどうするか、スクラッチ開発、業務パッケージの導入、マイクロサービス方式による組み立て等いくつかの方法があり、それぞれの中でどの製品を選択すればよいかという選択肢があります。そして厄介なことは企業の置かれた状況(情報システムスキル、予算、利用者の情報リテラシー)等でフィットする方法が違う事もあります。またそれぞれの製品の選択はシステムの稼働後も引き続き影響し、リスクも大きいので慎重にならざるを得ません。ただいくら慎重になっても先が見えない中で、かつ十分とは言えない情報量の中で選択をせざるを得ないのが現状なのです。はっきり言って決め手がないのです。おそらく中小企業の中でしっかりした方向性の元、納得感のあるコストで良い選択をすることは至難の業ではないでしょうか。しかしそれでも選択をしないと先に進めません。

 そこで現実的な進め方を以下に提案します。先ず5年程度の中期で情報システム構想を作成し、その投資効果の算定をします。ある程度の技術トレンド情報を集めた上で、現システムの寿命を配慮して自社で開発または構築できそうな規模を選択基準として進めます。大きな方向性が定まったら枝葉末節な部分で必ず不平不満が出てきますのがそこは割り切って進める覚悟を持って下さい。

【中小企業の情報システムの保守と運用問題】

 情報システムの保守・運用問題は大企業でも悩みを持ち続け、青息吐息の状況が続いています。そもそも保守・運用業務はシステムの設計や開発した技術者でないと馴染みにくく、極めて属人性が高い代物なのです。エレベータや車のような大量生産製品は開発・制作者と保守者は別人でも担当できるようにマニュアルの充実や部品の補充、保守担当者の教育がなされています。しかし情報システムはたとえパッケージを利用しても、扱う情報はそれぞれ企業独自のものであり、企業自身の責任で動かすことになります。中小企業は規模が小さく専任の担当者は置けません。パーッケージを提供したベンダーも日常的に張り付いて保守に付き合ってはくれません。少しのトラブルが次のトラブルを呼び日常の正常稼働が保証できないことが多くなります。利用者からの信頼感が喪失し、エンハンスやトラブル対策の作業も協力が得られにくくなり、更に稼働状況を悪化させます。これが進行すると担当者のストレスを増大させ、退職などに追い込まれることになります。よく知っていた担当者の後釜に未経験者が担当しなければならなくなり、結果は火に油をそそぐことは明らかなのです。これを保守運用業務の負のスパイラルと称します。これを続けると情報システムに支えられた業務はどこかで破たんをきたすことになります。社内問題で収まっている間はまだ誤魔化しが効きます。取引先との業務がスムーズに進まなくなれば企業存続の憂き目にあう事態になります。深く静かに進行しているガンのような存在なのです。

【情報システム人材の育成と専門家】

 今までの問題や課題を見ていると共通するテーマがあります。それは人材問題です。企業は人材が命といいますが、こと情報システムに関してはすべてが人材問題に行く着くと考えてよいでしょう。従来は企業の一部の業務を代替えするだけの存在、そして人間が作業するための補助的なツールに過ぎなかった情報システムは、それゆえ情報システム担当者の質も量もその程度の対応をしておけばよかったのです。しかし今や情報システムはその勢力をどんどん強めて留まるところを知らない勢いです。しっかりした人材を情報システム担当者を置かなければその良さも、怖さもわかりません。まして手なずけてうまく利用することなど出来るわけがないと認識して下さい。本書でキーパーソンが必要と提案している理由がここにあります。どんなに小さな中小企業でも、キーパーソンだけは外部の専門家に依存するべきではありません。時間がかかっても自社内に影響力があり、経営者から信頼されている人材を情報システムキーパーソンに指名して育成して下さい。これは一般的には「急がば回れ」と言われることと同じで、一見遠回りのようですが現在では唯一無二の解決策です。