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4-4 エクセルの作りすぎは大変なお荷物

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【エクセルの効用】

 エクセルは表形式でセルと呼ばれる枠の中に、データの定義と加工の指示(プログラム)を埋め込んだ一種の小型情報システム開発ツールです。当初はLotus1-2-3やIBMのマルチプランという製品が出回って利用され始めましたが、最終的にマイクロソフト社のエクセルがシェアーの大半を確保し、以来改良を重ねてこの分野ではデファクトスタンダートとなりました。

旧来の情報システムは手続き型言語(コボルやフォートラン等)を使って、データの流れや加工方法を逐次的に定義するので、処理の順序や場所の特定なども精緻に指定しないと間違いを起こすことがよくあったのです。エクセルはプログラムから逐次的な要素を排除してあるので、プログラマーのような専門家以外でも作成できるようになり、通常の業務の中のデータ集計や加工、編集などには画期的な便利さを発揮することができました。オフィスでは一人一台のPCが配置されるようになると爆発的に利用され、従来の企業の情報システムを補完する形で浸透したのでです。また企業の基幹システム(一気通貫の情報システム)が稼働していなかった中堅中小企業ではエクセルで作成されたシステムが、基幹的なシステムの一部を肩代わりするような使われ方もされました。今でもそのような企業が沢山見受けられます。

 

【エクセルレガシーという言葉】

世に「過ぎたるは及ばざるが如し」という諺があります。エクセルは確かに有効なツールですが、有効さが仇になっているという現象が見え始めました。パソコンに強い人が現場主導で、他の部門からの制約もなく、その人の周辺の業務だけが便利になるシステムをエクセルで作ります。その結果その「便利さ」にその周辺の一部の人は喜ぶことになります。しかし人事異動でその人がいなくなると、修正ができない(しにくい)という問題が発生しました。異動しなくてもその人は現場でエクセルの神様とあがめられ便利屋さんに使われて、本来業務との両立に悩まされることになりました。

また優秀な人ほどエクセルの便利機能をふんだんに利用するので、属人性が高く、作成した人以外は修正や操作もできないエクセルシステムが多数発生することになったのです。更にエクセルシステムが乱立したことで、Aのエクセルシステムの出力を利用してBのエクセルシステムを動かすようなケースも出てきます。一旦デジタル化され折角コンピュータに入ったデータが、別のエクセルシステムで人間が入れ直すような2重、3重入力という無駄な作業が発生します。

このような問題は大企業でも同じように発生していますが、情報システム部門が手を差し伸べて徐々に統合されたシステムに吸収されつつあるのです。このような現象をエクセルレガシーと言います。そして中小企業はいまだにその不合理が残ったままの企業が多いのです。使い捨てのシステムや一時的なシステムならいざ知らず、企業の基幹をつかさどるシステムにはエクセルは向きません。企業がある一定の規模になったら必ず便利さより不便さが上回ることになるからです。その時がシステム一新のタイミングが来たと考えて下さい。

 

【市町村合併のようなもの】

エクセルシステムと社内統合システムの関係は「平成の大合併」と言われた市町村合併のようなものです。合併によりそれぞれの市町村で行われていた同じような業務(大半が同じ業務であった)を統合することにより従来の半分以下の人数で対応できるようになりました。もちろんこれだけが市町村合併の目的ではありませんが、これも大きな狙いでした。また行政区域が大きく広がり予算規模の拡大や行政パワーの向上に伴う影響力の効果的な行使が可能になりました。中小企業内の社内システム統合化によるメリットも全く同じです。先に2重、3重入力の無駄を省けるという説明をしましたが、それ以上に事業管理や経営に関わる情報の一元化が可能になり、極めて効果的に素早く正確に管理的な情報提供が可能になります。エクセルシステムが使われ出して約20年、中小企業にも広く普及を始めて約10年になりますが、統合化の時期を迎えていると思います。エクセルレガシーとなったシステムを統合化して吸収するだけでも基幹システムの構築は十分な効果があります。

 

【エクセルは不要になるのか】

とんでもありません。エクセルレガシーとなっている機能を基幹システムで吸収しても部門や個人特有の資料作成は残るものです。それらは基幹システムの枝葉として改めて、それぞれの部門や個人が個別に作成すればいいのです。それこそがエクセルの本領を発揮できる使い方になります。そして基幹システムとエクセルの調和のとれたシステムが出来上がると企業の情報システム化がより効果を生むことになるはずです。