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4-1 情報システムの前に社内の業務改善案を作成する

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【全社の業務改善案作成のアプローチ】

企業は生き物であり、時間経過とともにどんな企業でも業務効率は劣化していきます。その理由は①業務環境の変化(商品の変化、顧客の変化、内部管理の変化)に適応するために継ぎ足しのプロセスを追加して非効率になる。

②PCなどで簡単に綺麗な書類が作成できるため、書類の価値(情報価値)以上にPC操作に必要な時間を費やしている。

③正確性や公平性を期すために社内の管理業務が増加してくる。

等になります。業務改革のアプローチとしてBPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)という大上段に構えて抜本的に改革を進める方法もあります。しかし中小企業ではBPRを実施する必要性はあまりありません。大規模に構えて改革をするほどの複雑な業務を行っていないことや、仮に無理に進めても現在の業務プロセスに慣れ切った現場の人を混乱させるだけになります。先ず長年にわたって溜まった垢をきれいにすることから始めます。上記の3点を改善するだけで充分に納得できる改善ができるはずです。

 

【経営方針やビジョンとの整合性】

経営方針や経営のビジョンをあらためて確認してから業務改善を進める必要があります。仮にそのような視点の方向性が明確に示されていないときは、SWOT分析などの手法を用いて、当面(3~5年程度)の企業の事業方向性などを整理することをお勧めします。業務改善になぜそれが必要かと言いますと、以降の検討段階では決定、決断をする時に必ず、二律背反の選択になったり、複数案の選択をすることになります。ゴールは同じでも、そこに行きつくのにどのルートを選択するかを決めなければいけませんん。おそらく議論は理性的、論理的なものばかりでなく、立場による違い、感性による違い等が選択に影響を与えます。そのような場合の判断のよりどころが「経営方針やビジョン」になるのです。もちろんこのようなケースだけでなく「経営方針やビジョン」は、経営者によって示され、社員の常日頃の行動規範や判断のために存在しているが本来の意義です。

 

【業務の見える化の必要性】

業務改善を進める場合、現在の業務がどうなっているかを知る必要があります。実際に業務に従事している人は当然どんなことをどんな手順で行っているか分かります。しかし何のためにその業務を行っているかを意識しながら担当している人は意外と少ないのです。そして前任者からの引き継ぎで行っていた、他の部門から要請された、等の理由で日常の繁忙に追われて必要性を考えないで仕事を消化していると思われます。一旦他の人、他の部門の人と擦り合わせをして、本来の業務の意味と必要性を議論しなくてはいけません。また生産現場では以前から作業手順や品質基準があり、改善の意識が働きやすいのですが、事務のオフィスではそのようなものはないのが普通です。仕事の対象や内容はしっかり定義されていません。そのための手段として「業務の見える化」を行います。見える化の方法は具体的に業務一覧表(業務棚卸)と現状業務フローを記述することになります。その詳細はこの後に説明をしていきます。

 

【業務改善案作成の留意事項】

業務改善案を作成するときに留意しなくてはいけないことがいくつかあります。先ずこの試みはできる限り全社を巻き込むことです。案を作成して改善を実行に移すときは現場の協力が欠かせません。中小企業は上意下達があまり効かない風土なのでなおさら事前に現場を巻き込んで、改善に対する現場の当事者意識を高めることです。そのためにはできる限り現場で中心的に動いている人に改善プロジェクトに参加してもらえるようにし、改善議論以外の環境設定(例えばメンバーの上司の協力や残業扱いなどの配慮)やプロジェクトの事務的な仕事は主催者(事務局)で推進するように心がけましょう。

改善案等の議論は参加してもらっているメンバーを通じて、それぞれの職場に持ち帰り、職場でも関心を持ってもらえるように報告会や意見収集の場を作ってもらうことも一案です。リストラなどを含む業務改革とは違って、今ある業務を改善しようという試みに真っ向から反対する人はいないはずです。

 

【業務改善の実現には情報システムの支援が欠かせない】

昨今は業務改善案を考えるとき、必ず情報システムを同時に考えないと意味がありません。それほど情報システムが企業の隅々みまで入り込んでいます。どんな業務でも、どんな組織の末端でも企業の業務プロセスは情報システムがかかわっている。故にある程度システム思考ができる人が議論に加わることが必要なのです。システム思考ができる人は、プロセスを定義する場合に情報システムに置換できるか否か素早く判断できます。改善案の議論も手際よく行われます。そこをないがしろにすると改善案どころか改悪案を作成することになりかねません。

 

【以下は業務改善作業の要諦です。】

❏ 業務改善プロジェクトの意義と目的

企業は生き物であり、時間経過とともに、どんな企業でも以下のような弊害が蓄積する。①オフィスワークは環境の変化(商品の変化、顧客の変化、内部管理の変化等)に適応するうちに、パッチワークが増えて、生産性が悪化する。②PCで容易に資料作成ができるため、情報価値以上のPC操作時間が増える傾向にある。③正確性や平等性を追求するうちに、内部管理のための管理業務が増え複雑化する。最適化するためには、常に部分最適と全体最適と事務コストのバランスをとって、改善活動を適度なタイミングで実施することが望ましい。

❏ なぜ今実施する必要があるか

当社は創業者のトップダウン型経営で事業を伸長してきたが、規模も拡大し複数人による組織的な経営体制に移行する時期に来ている。早晩経営者や社員がそれぞれの役割と責任を明確に意識し、業務を遂行する企業風土を醸成する必要がある。業務改善を伴う業務プロセスを確立し、実践することはそのための第一歩と考える。また今後建設機械事業を経営基盤に置いた上で、事業の多角化を進めることは大きな経営課題であるが、複数以上の事業を効率的、補完的に発展させるためには、相互の業務プロセスの共通化も必要な事である。業務改善プロジェクトを推進する理由がここにある。

❏ 業務の見える化

生産現場では、作業手順が明確で品質基準が存在しているので改革や改善の思考が働きやすい。一方オフィスでは、仕事の対象や内容、成果が見えにくい。このため業務改善の前に「業務の見える化」をする必要がある。本プロジェクトでは、業務の棚卸を実施して、現状の業務フローを記述した。その際現場で意識している。問題や改善点について注記を求め、その点についてプロジェクト内で検討を重ねた。なお通常なら同時に業務量等の調査を行うことがセオリ―であるが、今回は時間と調査労力の兼ね合いで       類推するにとどめ、関係者で問題点を共有することに注力した。

❏ 問題点とは何か

現状を把握したうえで「あるべき姿」とのギャップが問題点になる。「あるべき姿」が明確にされていて関係者のコンセンサスが出来上がっていれば、解決策は容易に見つけられる。しかし現実には関係者の立場や視点によって「あるべき姿」が違うので、妥協を強いられる局面もあり、関係者間の擦り合わせと、リーダーの裁量が問われることになる。現在掲げた「業務課題と改善の方向性」はまだその途上であり今後具体化するにあたり十分にこの点を留意すべきと考えている。