中小企業をITで元気に!

11-1 中小企業のITガバナンスとは

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【ITガバナンスとは】

経産省ではITガバナンスを「企業が競争優位性の構築を目的としてIT戦略の策定及び実行をコントロールし、あるべき方向へと導く組織能力」と定義しています。そういう意味では大企業と違って中小企業の多くはITガバナンスが機能していないと認識するべきでしょう。なぜITガバナンスの必要性が叫ばれ始めたのでしょうか。企業にとって情報システムの重要性がこの10年間で飛躍的にあがったからです。企業の隅々まで情報システムがはびこり、業務の中枢は情報システム無しでは企業の運営が担保できなくなりました。挙句の果てに情報システムの優劣で企業の競争力が左右されるという、攻めのITシステム等も現実化してきました。そうなると情報システムを企画し開発する力、情報システムを安全安定的に稼働させる力、IT技術の進歩に適応して新技術を取り込む力を発揮できる人材の育成や組織や体制がポイントになります。企業を経営したり統制をする枠組みの中で、ITや情報システム関係のウェイトを高めてITガバナンスを強化することが新たな経営課題となったのであります。

 

【ITキーパーソンの育成】

中小企業ではどう考えればよいのでしょうか。大企業のITガバナンスの確立をみてから考えるというのでは遅すぎます。情報システム化やデジタル化の波は大企業と同じようにやってきます。以前にも書きましたが中小企業にとって情報システム化の好機が到来しているのです。ここで中小企業でも実現できるITガバナンスを提案します。

2.5で記述した「情報システム化キーパーソン」を育成することです。繰り返しになりますが、外部のIT経験者を中途採用するのは現実的ではありません。社内の中核で活躍している将来の経営幹部やその候補者を指名して、IT関連の必要な知識を習得してもらうのが一番効果的です。急がば回れの例えがありますが、それが確実で効果的です。そのキーパーソンが、各部門の核人材を集めて、キーパーソンを中心に社内で業務改革(整備)のプロジェクトを起こし、OJTによって情報システム関連の経験を積ませるのです。

もちろん人材的な余裕がある訳でないので部門代表の核人材は現業を兼ねて参加します。当然最初は外部の専門家に支援を依頼する訳ですが従来のSIRのように情報システムの開発を委託する訳ではありません。あくまでも先生役としてのパートナーという位置づけになります。このような形で従来の情報システムを本プログの投稿で述べてきたような考え方で整備したり、再構築を行います。その過程で更に知識を習得し、経験を積むことでITガバナンスを確立する人材になるのです。

 

【デジタル人材の育成】

DX時代とは社会のかなりの情報がデジタル化する(デジタル化されてしまう)ことを前提に企業や官公庁、家庭や個人の周辺が利便性を求めて、情報システム化する時代のことを言います。その良し悪しや好き嫌いの議論は棚上げしておきますが、新しい環境に適応したり、デジタル化社会をリードするためには「デジタル人材」が必要と言われています。実は「情報システム化キーパーソン」こそが中小企業でデジタル人材の先駆けになるのです。キーパーソンとキーパーソンと一緒に業務改革プロジェクトを経験した部門の核人材が、デジタル人材として次世代を担うことになります。デジタル人材とは、企業の業務や組織、新事業の推進などを情報システムを意識したうえで推進できる人材のことで、従来のITの専門家ではありません。これからのDX時代ではまさに”人財”として生まれ変わるのです。

 

【野良システム、野良ロボットの発生を防ぐ】

大企業の情報システム系の人たちの間で「野良システム、野良ロボット」という言葉が噂されています。社内の情報システムサービスを担当している情報システム部門は、大方は限られたパワーのコスト部門です。するとサービスの提供に不満を持ったユーザ部門は独自にベンダーと図って部門の情報システムを導入することがあります。特に研究開発、生産管理部門などは情報システム化を理解できる人達が多いので特にそうなりがちです。システムが完成して稼働まではあまり問題ないのですが、その後そのシステムを維持しエンハンスすることができなくなります。そのための体制や予算を用意していないからです。その必要性理解していないからです。情報システムは生ものでないので劣化しないと考えているとそれは間違いです。システムが変わらなくてもその周辺の環境がドンドン変わっていくので相対的に劣化するのです。結局使いづらくなったり、使えなくなったりして情報システム部門にSOSが出されます。それでも情報システム部門が支援できれば救われますが、そうでないと飼い主がいなくなった野良犬になってさまようことになります。

最近脚光を浴びているRPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)等もその傾向があるので野良ロボットと言われます。

このような問題は全てITガバナンスに起因して起こります。情報システム化が進むほどにITガバナンスが重要になってきます。