中小企業をITで元気に!

1-2 過去に情報システム化が進まなかった理由

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【中小企業では情報システムが有効に活用されているか】

 

最近「攻めの情報システム」、「守りの情報システム」という言葉を聞くことが多いと思います。攻めとは事業の中枢に情報システムを組み込んで同業他社とのサービス競争力を強化し、顧客の抱え込みなどに威力を発揮するシステムです。守りとは主に社内のバックヤードの省力化や正確性を向上させることを狙って導入するシステムです。中小企業ではこの攻め領域に情報システムを活用する企業は一部を除いてまだ見当たりません。一方守り領域は早い時期から間接部門の省力化、合理化を目的に活用されていました。しかしこのレベルから中小企業の情報システム有効活用はぴたりと足止めを食らっているのです。いや足止めどころか現在のレベルを維持するための人材問題と劣化した情報システムに悩まされ、むしろ後退しているのはないでしょうか。大企業とは有効活用という視点でも決定的な差ができ上ってしまっているようです。

この原因は決して情報システム投資の多寡だけの違いではありません。掘り下げて分析しない限り今後の有効活用に向けてのブレークスルーはないと考えますので、以下その原因をいくつか挙げて説明してみます。

 

【情報システムの継続性を担保できない】

 

俗に中小企業と称される企業には情報システム部門がありません。規模が小さいと情報システム担当者すらいない場合もあります。私の経験から推察すると従業員規模100名に対して情報システム担当者が1名存在するというのが平均的なイメージではないでしょうか。従来のオフィスコンピュータ時代はそれで充分でした。しかし前述のインターネット時代に入ってからは電子メールやファイル共有、業務別アプリケーション等が簡単に導入でき、それを支えるインフラ基盤(PC、サーバー、ネットワーク)を含めて運用・維持するべき必要性が短期間に増加してきました。当然理解しなければならない技術領域も広がって、必要な技術力のキャッチアップもままならない状態にはまり込んだわけです。経営者や管理者は急変した必要最低限の情報システム能力を補強する重要性に気付かず、また気が付いた経営者がいてもその補強の優先順位はかならずしも高くなかったので、担当者の負担はどんどん増えるばかりでした。その結果情報システムの維持に支障をきたし、情報システムの不備が現場の利用者に迷惑をかけ、更に情報システム担当者の負担が増えるという負のスパイラルに落ち込んでいった企業が多いのです。この状態では、情報システム担当者は目先の維持・運用やトラブル対応に追われて、情報システムの有効活用に目を向ける余裕は全くないので、必然的に環境の変化を織り込んだ有効活用などは夢のまた夢となります。

加えてPCのOSとして一般的なウインドウズOSのサポート切れに伴うPCの入れ替えやセキュリティ対策など、直接的な業務効果を伴わない投資が次々を発生することは、従来の設備投資の感覚では異常な事であり、この点も経営者の心証を悪くしています。

情報システムを安全、安定に維持運用する体制を早急に整備しないと、有効活用を期待する以前に情報システムのトラブルに起因する事業の停止や継続性を担保できない現実がそこにあります。

 

【情報システム構築のロードマップが描けない】

 

経営者が投資をする時に一番知りたいのは、投資の効果です。投資額と効果を比較しながら将来の事業環境と自社の立ち位置を考えて決断する訳です。従って経営者は情報システム化を促進するべきと頭で理解しても、投資額とその効果、そしてそのリスクについてある程度事前に知ることが絶対条件なのです。もちろん中小企業経営者の大半は情報システム領域に関しては全くの素人であることが普通です。そうすると「誰か」が次期情報システム化の構想を考え、その投資額を見積り、自社にそのシステムが定着するための施策を、素人にも理解しやすい形で明示してくれることが必要なのです。

そしてその「誰か」とは中小企業の立場で当事者意識を持った人でなければなりません。決して外部のベンダーではこの役割は果たせないのです。また情報システム系のコンサルタントに頼る手はありますが、踏み込んで相談に乗ってくれるかどうか、コンサルタント費用の相場観を考えると現実的ではないでしょう。当然自社にはそのような人材がいません。ちなみに従来の情報システムは、システムというより単発の機能を購入するという傾向が強く、業務の改善や情報システムの専門的な知見が無くてもベンダーの提案だけである程度判断ができました。しかし今後考えるべき情報システムは、その延長線上ではないのです。中小企業経営者は情報システム化構想のロードマップを待ち望んでいるのです。

 

【情報システムの投資が怖い】

 

ある程度の規模になっている中小企業は、過去に一気通貫の情報システム構築に挑戦し、そして無残な結果に終わっていることが多いのではないでしょうか。外部ベンダーの提案に乗ってERP(Enterprize Resource Planning)パッケージや業務パッケージを導入してみたが、

・導入途中で費用が膨らみ過ぎて頓挫した。
・システムは完成したが、現場で使えない代物だった。
・システムに投入したデータが不正確で新システムとして効果が出なかった。
・ベンダーの支援をあてにしたが期待外れで開発が進まなかった。
などなど、経営者同士の集まりでは愚痴とも怒りとも知れない言葉が飛び交っている光景が目に浮かびます。

また自社の誰に頼ればいいか、最後までやり抜いてくれる社員はいるか、足元を見れば不安になるばかりの現実が転がっています。中小企業経営者は情報システムに向けて投資をしたいが、思いを共有して支えてくれる人材が社内外にいないことも投資に踏み切れない一因なのです。