連載の開始にあたって
私は1980年前半から企業の情報システム構築や運用のお手伝いをしてきました。
当然その当時の支援先は大企業ばかりであり、そこでは多くのお金と人がつぎ込まれ、人より貴重なコンピュータ中心のスケジュールに振り回されながら、情報システムの開発や保守に携わったものです。
一方中小企業でも、遅れながらも負けじと企業規模に相対して会計処理や給与計算を、オフコンと称する小型コンピュータを導入して省力化を図り、生産性の向上に努力してきました。
しかし最近私は中小企業の情報システム化の歩みは完全に止まってしまった、いや大企業との相対的な比較ではむしろ後退していると考えたほうが良いと思うようになりました。いくつかの原因がありますが、日本の一人当たりGDPが世界22位に甘んじている事は、中小企業が足を引っ張っているという説も、日本経済に占める中小企業の影響力の大きさを考えると、あながち的外れでもないと考えます。(注1)
中小企業の生産性の底上げを図って一人当たりGDPの上位復帰を果たすことはできないか。そのためには「中小企業が情報システムを有効に活用できる」ことが唯一無二の処方箋と考えるようになりました。そして企業自身がデジタルトランスフォーメーション時代に企業の存続をかけて生き残るためにも「情報システムの有効活用」は必須なのであります。
これからいくつかの視点でこの問題を掘り下げて、お役に立てる情報を発信し、広く中小企業の皆様に貢献したいと考えています。宜しくご愛読をお願いします。以下に今後記載予定の大項目を記します。
1.中小企業・情報システム化の現状と飛躍の好機
2.中小企業の情報システム化には社内のキーパーソンが必須
3.情報システム化構想を作成しないと物事が進まない
4.まず社内の業務改革、業務改善を先に手掛ける
5.情報システムを整備(刷新)する計画を作成する
6.情報システム化パートナーの選定と支援の依頼方法
7.プロジェクト実行中に発生するトラブルの数々
8.情報システムの導入とデータの整備や移行
9.情報システム利用者研修はシステム開発より重要
10.情報システム稼働後の投資効果の判定
11.継続性のある情報システムの維持・運用
12.中小企業のITガバナンス
注1:中小企業白書の定義によれば、日本の全事業所数の99%、全従業員数の70%、全出荷額の50%を中小企業が占める。