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2-1 情報システム構築費用は激減しても・・・・

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【30年前と情報システム投資額を比較してみる】

 

情報システムを支える基盤を大きく分類すると、まず社会的なインフラが挙げられます。これは主にネットワークの事を指しますがインターネットが出現するまでは、借りた本人のみが利用できる専用線と称するネットワークが主流でした。決められた接続先と1本の物理的(のちに論理的な専用線に進歩しましたが)なラインでつながる形態で、当時の電信電話公社に借用申請し、価格もスピードと距離に応じて決まる月額費用が数万から数十万円/本の時代でした。今はご存知の通りインターネットの入り口までのネットワーク費用を支払えば、ほぼ無制限にどこにでも利用できる環境が出来上がっています。

次にコンピュータと称するハードウェアに関するコストについて説明します。これもムーアの法則通りに3年で約2倍のコストパフォーマンス向上が実現しています。30年では2の10乗(1024倍、1億円が10万円)となり更に現在も向上を続けています。情報システム基盤の構成要素の最後はソフトウェアです。オペレーティングシステム(以下OSと称する)はハードウェアと一体になり、価格もハードウェアに吸収されるかのように、利用する側は気にならないコストになりました。業務ソフトウェアだけはそれぞれの業務に合わせてパッケージ、手作りを選択してある程度の投資を覚悟しないといけませんが、準パッケージでしかもオープンソースと呼ばれるソフトウェアが適用できると、驚くべき安さで自分の体に合ったシステムの開発が可能になりました。

以上のように情報システム基盤を手に入れることはすこぶる容易で手軽に入手できる時代になったのです。しかし情報システムは他の設備と違って、基盤を購入すればすぐに有効活用できるものではありません。ここが他の設備投資と決定的に違うのです。以下に何が違うか具体的に説明をしましょう。

 

【しっかりしたシステム構想が有効な情報システムを生む】

 

企業で利用する情報システムは情報システム基盤が安くなるにつれて、適用領域がどんどん広がっていろいろな種類が増えています。それと同時に企業自身の戦略的な経営により、事業領域の変化や事業への軸足の置き方が変わってきます。その方向性をよく認識したうえで、情報システムの開発や再構築、それに伴う情報システム基盤の整備などを実行しないと経営方針とズレが出てくることになります。現在の情報システムで達成できるレベルと要求レベルのバランス、情報システム技術の進歩によるカラパゴス化のリスク、その上で自分たちの情報システムリテラシーで有効に活用できる情報システムの構想を練ることが重要です。それができないときは無駄な投資につながってしまいます。そして重要なことはこの構想を練るのに、情報提供や参考意見はベンダーや外部専門家に委ねても、取捨選択や判断は自身で考え抜いて行う必要があります。決して他人任せにしてはいけません。

 

注:カラバゴス化のリスクとは、自社で利用している情報システムのシステム環境(OS、ハードウェア、パッケージソフト等)が技術変化に追随できなくて陳腐化し、維持できなくなる現象をいう。マイナーな環境を選択するとそのようなリスクが大きくなる。

 

【情報システムは動かして「なんぼ」】

 

情報システムは時として開発することが注目されがちですが、利用企業にとってはそのシステムが実際に稼働して利用者の業務に役立ってこそ、有効な情報システムとなります。ところが情報システムを遅滞なく安定的に稼働させるには地道な努力が必要で、並大抵の覚悟ではできません。ミッションクリティカルなシステムであるほど、システムに投入する情報(正確なデータの投入、最新の組織や顧客先情報、間違いのない製品情報等の更新)や的確な業務ソフトウェアの維持、メンテナンスなどーこれらを総称して情報システムの運用と称するーが必要で、ここで手を抜くと情報システムへの信頼性が一挙に落ち込んでしまいます。この重要性の認識が甘い利用企業は折角大金をはたいて投資した情報システムを、使えないシステム、役に立たないシステムに変えてしまい、有効活用できずにどぶに捨てる結果となってしまいます。利用企業にとってはシステムの開発や構築が終わってからが勝負なのです。そのために十分な維持運用体制を確保しなければなりません。

 

【情報システムは業務の変化に対応して成長させる】

 

また企業の業務は社会の変化や時代の変化に応じて改革や改善を余儀なくされます。情報システムが全社の情報の流れを担う役割を果たすにはこの変化を見据えた上で、柔軟性のある情報システムを考えないと、すぐに陳腐化するリスクと隣り合わせになるのです。社内業務であればまだ誤魔化しができるのですが、対外的なシステムでは素早く即応しないと競争力がそがれることになります。

社内外の業務の変化に応じて情報システムのエンハンスを要求するのは通常現場です。現場の声が小さいときは情報システムのエンハンスは劣後に置かれます。また情報システム担当が即応できる体制になっていないと更に劣後に置かれれます。まさに「ゆでガエル」状態で、深刻な状態になって初めて事の重大さに気が付くことになるのです。そのためには業務の変化に敏感に対応できるような組織や体制と風土作りがポイントになるでしょう。この点で外部に依存する体制ではどうしても不利になります。情報システム関連業務のアウトソーシングは推進したとしても、自身が主体性を失う事の無いように配慮しないといけません。