中小企業をITで元気に!

1-3 シェアリングエコノミーは情報システムでも

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【シェアリングエコノミーとは】

 

シェリングエコノミーという言葉が最近出回っています。米国発のウーバー(自家用車のタクシー化)やエアービーアンドビー(自宅の民泊)などが典型です。個人で所有しているものを自分専用としないで、有料で他人にも貸し出して有効活用しようという試みです。世界的規模で考えれば省資源につながり時代の趨勢に合致していることもあって、またたく間に世界に展開されつつあります。この背景には高性能なコンピュータと世界中に張り巡らしてある高速のインターネットで、個人レベルのニーズとシーズのマッチングを実現する仕組みが出来上がったことがあります。そしてこのシェリングエコノミーは車や家に限らず、社会のあらゆるモノ、コト、サービスに広がりつつあるのです。

 

【コンピュータの世界でシェアリングエコノミーとはクラウドコンピューティング】

 

コンピュータの世界でも確実にシェアリングエコノミーの波が押し寄せています。言わずと知れたクラウドコンピューティングです。従来は自分自身で所有する形(オンプレミス形式と言います)が当たり前でした。実は今でも企業や国の重要な情報を扱う情報システムは、他人のコンピュータでなく自らの管理下で責任が持てる形態にするべきという考えが支配的でコンピュータの共同利用には否定的です。それがなぜクラウドコンピューティングが注目され、利用されつつあるのでしょうか。そのわけは決して経済的理由だけではありません。その第一は情報セキュリティの観点です。サイバーテロや蔓延するウィルスに立ち向かうために企業ごとに必要なスキルを保持するのは限界にきている事が上げられます。自社の限られた情報システム設備やソフトウェアより、全世界的な英知を集めて構築されたクラウド環境のセキュリティ技術のほうが優れているという事です。

第二は大規模なコンピュータを維持運用する観点です。維持・運用する人材はどんどん専門スキルが必要になります。そして専門的な高度情報システム技術者を個別企業で抱えることも限界に来ています。日本の都市銀行でも勘定系システムの一部をクラウドに移すことを検討しているとも聞きます。もちろん利用した分だけ料金を支払うという従量制の価格が一番の魅力であることに変わりはありません。

 

【日本でのさばる「クラウドもどき」の悪影響】  

 

クラウドコンピューティングの定義は今もって明確なものはありません。「クラウド」という呼び名も、遠く雲の中にあって見えないコンピューターを利用するという意味で名づけらました。日本のベンダーはこれをいいことに少しでもクラウドコンピューティングの要素を持っている形態(ここではクラウドもどきと呼ぶ)を創り出し、利用者にPRしてきました。このためにクラウド本来の効用を知らないまま、クラウドもどきをクラウドと勘違いする利用者がたくさん存在しています。そして彼らはクラウド本来の恩恵に浴していないので、必ずしもクラウドに好意的ではなく、クラウドコンピューティング普及の妨げになっています。特に技術的な経験が少ない中小企業の利用者は自分自身で判断できないため、よけいに影響を受けやすい立場にあります。情報システムの有効活用を促進するためにはこの呪縛から抜け出さなくてはなりません。

 

【中小企業にとってはクラウドは大きなオポチュニティ】

 

では本来のクラウドコンピューティングとはどういうイメージでしょうか。ここでは技術的な説明でなく例え話で説明いたします。日々の食事をどうするかイメージして下さい。本来のクラウドはうまくて評判の大衆食堂のようなものです。気分に応じて総菜も選択でき、毎日食べた分だけの費用を支払います。これに対してクラウドもどきは高級料理店を利用するようなものです。確かに利用しただけの支払いで済みますが、費用は分不相応なサービス料まで含まれています。そして自分で自炊する家庭料理がオンプレミスになります。日々の費用は一見安くなりますが、キッチンセットやガスレンジ、オーブンなど購入しなければならない。もちろん食器などもです。大家族で長期に使うなら原価償却も可能ですが一人暮らしには向きません。これが中小企業にとってクラウドコンピューティングが非常にうれしい理由です。うまくて安い大衆食堂を見つけて明日の活力がみなぎる食生活を送りたいものです。  社員数や情報量が少ない中小企業はそれに応じた従量制課金のクラウドコンピューティングを利用することで、情報システムコストは従来より極めて少額になります。しかし情報システムがその効果を発揮するのは、システムを構成するコンピュータではなく、情報システムとそれ利用する人間の意識(知恵を工夫)で決まってきます。この最後の難問をクリアした中小企業だけがこれからの時代を生き残ることができるのでないでしょうか。